大阪韓国映画祭のためにファン・ジョンミンさんが来日
2018年11月にファン・ジョンミンさんが大阪にいらっしゃいました。
大阪韓国文化院が主催する大阪韓国映画祭でファン・ジョンミンさんの特集が開催され、
ファン・ジョンミンさんのトークショーが開催されました。
上映された映画は、
「ヒマラヤ」「新しき世界」「ベテラン」の3本、
「ベテラン」上映後に1時間程度のトークショーがありました。
私もまだファンになって1年もたっていない頃で、
とても楽しく参加させていただきました。
ジョンミンさんのトークも楽しく、ジョンミンさんファンの方ともお話できて
本当に楽しい幸せな時間をすごさせていただきました😊
実はこのイベント、始まる際に、撮影は自由にどうぞ、と言われ(⁉)
まさか、日本のイベントで撮影ができるとは思っていなかったので、
私はビデオなどを撮ることができなかったのですが、
イベントの様子をYouTubeにあげてくださっている方がいらっしゃるので、
トークの内容をまとめてみました。
※大阪韓国文化院の動画
ファン・ジョンミンさんトーク内容
来日の理由、1億俳優と呼ばれることについて
■ 来日は何回目ですか?
2回目です。
1回目は東京映画祭に招待され、6、7年前に来たことがあります。
■ この大阪韓国映画祭に来られた理由は?
ソウルより空気がいいことです(冗談です)
一昨年、英国の映画祭での特集に招待された時
その時にトルコのファンの方と話したんですが、その方がDVDを全部持ってて、自分の映画を本当に楽しんでらっしゃって、すごく感動したんです。
韓国の方とはイベントとか、交流する機会があるんですが、
外国の方と一緒に映画を見て、感動を受けたり、お話することができることは光栄なので、この映画祭に参加したかったです。
■ 韓国では国民的俳優、1億俳優ですが、そう呼ばれる気持ちはどうですか?
とても光栄なことと思っています。
職業が俳優なので、作品に対していつも一生懸命打ち込んでいる証拠にもなりますし、
たくさんの観客の方が自分の映画を見てくれて、好きになってくれるということが分かるのですごく光栄なことです。
一方で、すごく緊張する、負担になるということもあります。
こんなにたくさんの人が見てくださるので、適当に作品に臨むということができないので、
いい作品を作るために一生懸命邁進しないといけないという、負担は少し持っています。
■ 2001年の「ワイキキブラザーズ」まではなかなか日の目を見ることがなかったと思うのですが、
そんな状況の中で俳優としてのモチベーションを上げていく何か強い思いというものはあったんですか?
私はもともと演劇をやっていたのですが、「ワイキキブラザーズ」まで経済的につらい時期もありましたが、大好きな仕事に打ち込めること自体が幸せで楽しいことだったので、無名の時期が長かったといっても、一時たりとも大変だ、辛いという風に思ったことがなくて、楽しくて幸せな時期でした。
■ 映画俳優としてのイメージが強いですが、ドラマやミュージカルなど様々なジャンルに挑戦するというのは何か俳優としてのポリシーがあるんでしょうか?
ポリシーがあるのは間違いありません。
でも、自分は映画というのは監督の芸術だと思っていて、そして、演劇は俳優の芸術だと思っています。
舞台で芝居をする時は、幕が上がって芝居がスタートしたら、映画のように監督が途中でカットと言ったり、あるいはNGと言ったり、またもう一回やり直すという声はかからず、カーテンコールまでその2時間ちょっとの時間は自分の舞台になっているので、映画もとても大事ですけれど、舞台は自分にとっては癒しの空間になっています。
映画「国際市場で逢いましょう」「ヒマラヤ」について
■ 「国際市場で逢いましょう」では一人の男の50年を演じてらっしゃいますが、演じるにあたって他の役と違って難しいところがあったんでしょうか?
作品の内容が、私の歴史でもあり、ストーリーでもあり、父の話であり、父の父の話でもありました。
だから、この作品をする時に、観客に向けては、私の父の話ですよ、あなたの父の話ですよ、私たち全員の父の話ですよ、というメッセージを伝えたかったです。この映画を撮影しながら、自分の内部でも大きな、パワフルなエネルギーが湧き出るのが分かりました。
■ 「ヒマラヤ」は実在の登山家の話ですが、実在の人物を演じるというのは、俳優さんはどういう心構えで演じられるのか。相当リサーチされるのですか?
自分は実在の人物を演じるにあたって、リサーチは一切やらない方なんですが、
しかし、この作品をやりたいと決めた理由の一つは、ヒマラヤの高いところ、7千メートルから8千メートルの間が、ヒマラヤデスゾーンというところなんですが、
もしそこに人が倒れても、すぐに助けにいかなきゃと思う場所ではなくて、助けに行く人が命が危うくなるからなんですが、ですから、そこに人が倒れたら、表現は適切ではないんですが、標識として見たりするケースもあるんです。
しかし、そこで絶命した人を助けようとチームを組んで、実際にそこに遺体を探しに行く、そのような話なんです。無謀ともいえる話なんです。
しかし、その話を聞いた時には、胸が熱くなって、また感動もして、この映画をやりたいというエネルギーが湧き出たんです。
映画「新しき世界」について
■ 今回、ファン・ジョンミンさんに会いたいという人が5千人以上応募してくれたんですが、応募欄に「チョン・チョン兄貴に会いたい」「チョン・チョン兄貴が梅田にくる」というコメントがすごく多かったです。
それだけ、「新しき世界」という作品を通じてファンになった人も多いんですが、この役はアバンギャルドというか、面白い役だなと思うんですが、この作品を選んだ理由は何だったんですか?
この作品を選んだ理由は、一緒に撮影するチームが私が好きな方ばかりだったので、この映画に決めようと思いました。
また、このストーリー自体が、男ばかりの話、男くさい話なんですけど、その映画が提供してくれる快感、そういうものが強かったんです。いわばやくざの話なんですけど、結局やくざの話というのは政治的な話につながったり、また政治の話はやくざの話につながったりするんですが、そこに興味があって、やってみたいなあという魅力を感じました。
■ 個人的な質問なんですが、最初に空港に登場するシーンのファッションは台本ですか? アドリブですか? ファン・ジョンミンさんのアイデアが入ってるんでしょうか?
チョン・チョンの人物については、自分のアイデアやアドリブがたくさん入っています。台本を最初にいただいてから、方言のところを直したり、悪態(욕)を直したりしていました。もちろん、監督の監修は最後に受けていますが。
最初の空港のシーンですが、彼はビジネス席に乗っているだろうし、普通だと降りる時に靴をもって来る人もいると思いますが、あんな人だったら、絶対ああいう姿で出てきそうだなあと、常識的な範囲でいいアイデアだなあと思って、監督に提案させていただきました。
映画「ベテラン」について
■ 「ベテラン」はどんな相手にも最後までくいさがるという役でしたが、ご本人とのシンクロ率はどのくらいありますか?
執拗に人にくいさがるという部分だけは100%シンクロしています。
■ アクションシーンが多いんですけど、殴るシーンはもちろん、殴られることも多いと思いますが、実際にはアクションの演出はどんな感じだったんでしょうか?
むしろアクションシーンに関しては、監督もベテランですし、武術を教えるプロの方もいるので、現場での雰囲気とか、覚えたりするのは難しくなかったです。いわゆるダンスの振り付けを覚えて、それを表現すると考えたらいいと思います。
しかし、この撮影現場で大変だったのは、撮影は夏だったので、血が流れるその血のメイクが砂糖成分でできていたため、蚊にかまれてそれが本当に死にそうでした。それが一番つらかったというのが思い出です。
映画「コクソン」について
■ 「コクソン」でのムーダンの役ですが、韓国では本物を超えて、これは演技じゃないという評価を受けていましたけど、この役についてはどんな思い出がありますか?
とりあえず、皆さんに言っておきますが、私はクリスチャンです。教会で執事の仕事もしています。
しかし、最初は撮影に恐れがありました。この作品をやろうと決めた後は、やはり自分の内部から、宗教的な意識というのはすべて捨て去ろうと決めていました。
お祓いのシーンがあるんですが、実際ムーダンの職業の人に会って、いろんなインタビューをやったり、実際の儀式を何度も何度も見させていただきました。そのお祓いというのは、最初から最後まで順番が決まっていたので、ずっと見ている間に、また撮影している間に、このムーダンの儀式は、一人のために、人ひとりのための一人劇だったのでは、と思うことが強くありまして、それについての研究とか、自分なりの勉強とかをずっとしていました。
■ ムーダンの踊りもそうですが、ベテランでも踊るシーンがありますが、踊りがうまいというイメージを何となく持っているんですけど、踊りに関しては自分で得意な方だと思いますか?
(ジョンミンさん、無言で手を振ります)
ベテランはアドリブだったんですよね?
踊りと言えば踊りなんですけど、実は踊りを学んだ経験はないんです。俳優として、踊りとかお祓いとかをどのように表現すればいいのか、一人で家で一生懸命練習していました。しかし、一人で練習する時はうまくいきませんでした。
本番の前にムーダンの方が使うところを借りてリハーサルを初めてやったんですが、その時に儀式をやる時の衣装を身にまとった瞬間、すごくひやっとする感じがしました。決して霊が自分に降りたという話ではないんです。誤解しないでください。でも、そのようにひやっとした感覚は今でも覚えています。そして、音楽を奏でる人たちと一緒に、合わせて楽しんで遊んだという感じでやらせていただきました。
でも、映画撮影が終わってから、ムーダンのこの儀式を自分もできるんだなあと思いました。ムーダンの先生が私を呼んで、あなたは本当に上手だから、ムーダンをやりなさい、そうすればたくさんのお金を稼げます、と言われましたが、その時私はきっぱり言いました。自分はクリスチャンなのでダメですと。
■ 「コクソン」では國村隼さんが出ていましたけど、ファン・ジョンミンさんは日本の映画とか、例えばこの監督からオファーがあったら出てもいいかなあ、という人はいますか?
監督はあまり分からないんですが、この方の作品が好きなんです、「うなぎ」という作品…今村昌平監督。その方の作品は好きです。オファーをいただければ。
映画「工作」について
■ 来年最新作「工作」が公開されますが、この作品はファン・ジョンミンさんにとってどういう作品になりましたか?
私にとっては、とても重要な作品です。映画的には大きな山を越えたような作品になってます。
なぜなら、スパイ映画というのは、皆さんハリウッドで撮られたようなものをご存じだと思いますが、非常に華麗なアクションが加味された「ボーンシリーズ」のようなジャンルがスパイ映画だと思っている方が多いと思います。でも、この映画は実話に基づいて作った映画なので、アクションが入ってないんです。
ですから、本当に北に行って人を騙したり、自分自身を偽ったりしながら、スパイ活動を続けないといけないわけなんです。映画は最初から最後まで、全体の流れをそのような雰囲気で持っていくということが、とても大変だったです。しかし、とても完成度の高い映画になったので、韓国でもとてもいい評価が得られたと思います。
ストーリーは実際の話で、90年代の初めから末ぐらいまでに実際に起きた話なんですが、自分も全然知らなかったし、韓国の多くの人が全然知らなかったことだったんです。観客の皆様に、こういうことが朝鮮半島に実際あったんだということを伝えたくて、この「工作」という映画をやらせていただきました。
ファンからの質問
■ 「ベテラン」のラストシーンは明洞なので、撮影大変だったと思うのですが、何か裏話がありましたら教えてください。
車で走っていくシーンは実際明洞で撮りましたが、裏道に入ってからのシーンは明洞ではなくて、忠清道の清州(チョンジュ)というところで撮りました。
正確な場所は思い出せないんですが、清州に明洞とイメージが似ているところがありました。明洞でああいうシーンを撮ろうというのは大変で、不可能です。明洞で撮影するためには店の人たちの許可がないといけないんですが、清州の商店街の人たちが撮影を許可してくれたんです。
私たちはそのシーンを1週間ぐらい、徹夜で撮影をしたんですが、この店の方たちが、店が終わると中の電気をつけたままにしてくれて家に帰られて、1週間ずっと協力してくださいました。本当にありがたかったです。
■ 奥様も女優さんですが、仕事に行く時や撮影の時、奥様はどんな言葉をかけてくれるんですか?
私の妻は今女優の仕事はしていません。出会って付き合っていた頃はミュージカル俳優として活動していましたが、今はプロデューサーとして仕事をしています。いろんなミュージカル公演をプロデュースするプロデューサーでもあり、私の会社の代表でもあります。
時々、質問しています。ミュージカル俳優あるいは女優をやりたくないか、と。全然という答えが返ってきました。
※ジョンミンさんが、日本語で「전혀」は何といいますか?と聞いたので、
MCの古家さんが「全然」と教えたところ、
すると、ジョンミンさんが「너무 全然」は何といいますか?と聞いていました😊
(古家さんが「ぜ~んぜん」ですよ、と答えてました💦)
先ほどの質問なんですが、自分は朝方人間で、妻はそうじゃないので、出かける時は妻はいつも寝ていて、これといったコメントはいただいてません。
しかし、私がやっている作品に関しては、いつも熱く応援してくれるし、また評価を、とても厳しい評価を率直に言ってくれる人です。
■ ファン・ジョンミンさんにとってファンというのはどんな存在なんでしょうか?
演劇の3大要素というのがあるんですが、ストーリー、舞台、観客と私は思ってます。観客がいなければ、俳優としての自分の存在はいらなくなってしまいます。ですので、私が作品を選ぶ大きな理由の一つが、この観客だとずっと思っています。
その観客は私のファンもいますし、ファンじゃない観客もいますが、観客は自分にとってとても重要な存在です。
私の職業が俳優なので、いつも素晴らしい作品を選んで、また一生懸命作品を作って、その作品を通して観客の皆様と疎通していきたいと、そのようにずっと思っています。ですから、ファンであり、観客であり、皆さんの存在はとっても大切な存在になります。
しかしながら、観客の皆さんの存在により、自分が表現したい気持ちをひっこめたり、少し曲げたりする、そういう風にはしたくないです。俳優としての自分の考え、自分の哲学というのを演技として表現して、皆様にしっかりと伝えていきたいと思っています。
その作品で皆様が拍手を下さったり、理解して下さったり、また皆様とこうやってコミュニケーションが取れたりすることに、とても幸せを感じています。観客の皆さんのことで、伺いをたてたりというような俳優にはなりたくないです。
観客の皆さんが、後に振り返りながら、私が生きていた同時代にファン・ジョンミンという俳優がいたなあ、同時代に生きていたことがとても誇らしい俳優がいたよ、ということを自分自身にも自分の子供にも、自分の周りの人にも言えるようなそんな存在の俳優になりたいと思っています。
観客の皆様へのご挨拶
■ 今後の予定も含めて、最後にご挨拶をお願いします。
こんなにもたくさんの方々に来ていただいて本当にありがとうございます。
本当にこの場に来てくださった方々、おひとりおひとり目を見ながら挨拶をしたいんですが、
とりあえず来ていただいて、すごくうれしいです。
皆様が私の作品で韓国語を学んだように、私も韓国に帰ったら、日本の映画を見ながら日本語の勉強を頑張ってみたいと思います。少しでもできる日本語を増やして、皆さんとコミュニケーションとってみたいなあと思っています。努力します。
そして、私の作品を通じて、私のファンになってくださった方もいらっしゃるというのは本当にうれしい限りです。これからもっともっと頑張っていきたいなあという思いでいっぱいです。
この場に来てくださった皆様のご健康と幸せをお祈りします。
ずっと人生を送っていたら嫌な時もたくさんあります。そして、幸せじゃない時もたくさんあると思います。
しかし、周りに目を向けると、いい作品に出会ったり、いい本をみつけたり、澄んだ空気を味わったり、また、とても素晴らしい友達が隣にいるっていうことを考えると、人生を送るというのはそんなに悪いことではない、と。
小さな幸せ、小確幸(ショウカッコウ)というのが、大きな幸せにつながるのではと思っています。
皆さんが私を好きな分、私も皆さんのために一生懸命いい作品を作ることに邁進していきます。
よろしくお願いいたします。
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